サイトに積もった真っ白な雪の上にテントを設営して、焚火や薪ストーブで暖を取りながら、雪景色を堪能する、雪中キャンプならではの楽しみですね。
積雪期の小板まきばの里では、車道や駐車場は除雪しますが、サイト内は除雪していません。サイト内にテントを設営する際は、サイトの雪を掘らずに、雪を踏み固めてその上にテントを設営します。こうすることで雪が解けても雪解け水は雪の下を流れるので、地面が雪解け水でぬかるむのを防げるからです。
ここでは雪の上にテントを設営するのに必要な装備とテクニックを解説します。
設営する前に
雪の中で作業するときは、手と足が濡れないように対策してから作業しましょう。
手は防水の手袋をはめましょう。特に氷点下の時に素手で作業すると金属に皮膚が引っ付いたり、凍ったものに引っ掛けたりしてけがをする可能性があります。
足は靴の中に雪が入らないように対策しましょう。積雪量が多く雪が柔らかいときに対策せずに雪の中に入ると、履き口から靴の中に雪が入り、それが解けて靴の中が濡れてしまい、冷たい思いをすることになります。そうならないように、履き口カバーが付いている長靴をはくか、靴にホームセンターなどで売っている靴カバーや登山用のゲイター・スパッツをかぶせます。靴カバーがなければ、非常手段としてビニール袋の底を切って筒にしてから足にまき、上下をガムテープで止めるという方法で対処する手もあります。
圧雪する
テントを立てる場所の雪が柔らかい場合は、まずテントを張る場所の雪面を踏み固めます。
最初に通路を踏み固め、その先にテントの大きさ+そのまわりの通路ぐらいの広さの範囲を踏み固めてたいらにしていきます。
広い面積の深くて柔らかい雪を圧雪するには、スノーシューやかんじきなど雪を踏む道具があると早く圧雪できます。DIYで簡単に作れる雪踏み板も便利です。(小板まきばの里では貸し出し用の雪踏み板を用意しています。)ただし、スノーシューやかんじきなどで踏んだところは、圧雪が十分ではなく、靴で踏むとへこんでしまうため、最後に靴で踏んで固めましょう。
靴で踏み固めるときは、カニ歩きで、まず靴の幅分開けて踏み、反対の足で踏み残したところを踏む、というように踏んでいくと、早くきれいに踏み固めることが出来ます。
また、雪が深くてカニ歩きが難しいときは、進行方向に向いて1歩前の足幅分外側をそれぞれの足で踏んだ後、内側を踏む、というように前進しながら踏んでいくと早くきれいに踏み固めることが出来ます。
設営道具の置き場所を作る
圧雪した場所の一角に道具置き場用のシートを敷いて、その上にペグなどの設営道具を置きます。雪の上に直接道具を置くと、道具が雪を溶かして雪の中に沈みこんだり、降っている雪が道具の上に積もったりして、あっという間にどこに置いたかわからなくなってしまいます。そうならないように必ずシートを敷いてその上に道具を置くようにしましょう。
グランドシートを敷く
床面にグランドシートを敷く場合は、グランドシートの下にアルミ断熱シートを敷き詰めてから敷くと、テント内が冷えるのを大幅に緩和できます。また、アルミ断熱シートを敷き詰めると、テント内をストーブ等で暖房したときに、熱で床面の雪が大量に解けて床が傾いたりデコボコになったりするのを軽減できるので、おすすめです。
雪面の上に直接敷くシートは、雪面専用に用意したものを使うか、きれいに汚れをふき取ったものを使いましょう。前回が雨キャンプだった場合などで、汚れたままのシートを敷いてしまうと、せっかくの真っ白な雪が撤収してみたら泥や草まみれになってしまい、残念な思いをすることになります。
ペグを打つ
積雪量が少なくてペグが地面に届く場合は、雪がないときと同じようにペグを打つことが出来ます。しかし、ペグが地面に届かないほどの積雪がある場合、普通のペグは使えません。雪面に普通の細いペグを打っても、力がかかるとペグが雪を切り裂きながら起き上がって抜けてしまうので、ペグを固定することが出来ないからです。
インターネットでは、雪中キャンプ用に長さの長い農業用のプラスチック製のペグを推奨している記事を見かけますが、農業用のプラスチック製のペグは気温が氷点下になるような条件下では使えません。氷点下ではプラスチックが硬化して大幅に強度が下がり、使用中や撤収時に折れる恐れがあるからです。折れたペグはそのままにしておくと危険なので、回収する必要がありますが、雪の中で折れたペグを探して抜くのは大変なので、氷点下でも折れないものを使うようにしましょう。
以下にペグが地面に届かないほど積雪量が多い場合のペグの打ち方を説明します。
雪用のペグを使う
一番手軽な方法は「サンドペグ」「スノーペグ」と呼ばれる幅の広いペグを使うことです。幅が広く長さも長いので、固めの雪ならふつうにペグを打つだけでちゃんとペグが効いてくれます。雪が柔らかくてペグが効かない場合は、ペグに開いている穴を利用して、後で説明する埋設ペグとして使うこともできて便利です。自作に挑戦してみたい人は、竹で作る方法がインターネットで紹介されているので参考にしてください。
埋設ペグを使う
雪の中に20cm~30cmぐらいの長さの金属、木、竹の棒状のものにロープをかけて横向きに10cm~15cmの深さに埋めてペグの代わりにする方法です(以下埋設ペグと呼びます)。細い薪を使ってもOKです。
埋設ペグを埋める穴を掘ったり、埋めたペグを掘り出すには、凍った雪でも掘れる小型のスチール製の角スコップがおすすめです。スチール製の角スコップは雪道でスタックしたときやタイヤチェーンをはめる際にタイヤの下の雪や氷を取り除くときにも活躍するので、雪道を走行する時には車に積んでおくと安心です。
埋設ペグの効きは埋設ペグを埋める深さで調節します。ペグを埋める位置は、埋めた深さからロープが斜めに引っ張られることを考慮して決めましょう。
埋設ペグには前述のスノーペグや細い薪などの木製や竹製の棒を使うことをお勧めします。もちろん普通のアルミや鋳鉄製のペグも埋設ペグに使えるのですが、①細いため埋設ペグとしては少し効きにくい、②ロープが滑りやすいため撤収時にロープが外れてどこにいったか分からなくなりやすい、というデメリットがあるからです。あらかじめ準備しておくなら、木の棒の真ん中に長さ15cmほどの雪の中でも目立つ色のロープを取り付けたものを用意しておくといいでしょう。
なお、インターネットなどではペグを十字に組み合わせて雪の中に埋める十字ペグも紹介されています。十字ペグは、固まりにくい乾いた粉雪でも抜けにくい、というメリットがある一方、凍りやすい湿った雪で使うと、撤収時に固く凍結した広い面積の雪を掘らなければならなくなるというデメリットがあります。湿った雪が多い中国山地では、雪が固まりにくく1本ではペグが固定できないというときに十字ペグにするとよいでしょう。
ポールを立てる
ポールの下には必ず小さい板をしくようにしましょう。雪の上に直接ポールを立てると、狭い面積に力がかかり続けるため、ポールが雪を溶かしながら徐々に雪の中にめりこんでしまい、最終的にはテントやタープが倒壊してしまう可能性があります。小さい板にずれ止めの出っ張りやくぼみをつけたポール用の敷板を自作するのもおすすめです。
スカートからの風の吹きこみを防ぐ
スカートが付いているタイプのテントの場合は、スカートの上に少し雪をのせて押さえておくと、スカート部分からの風の吹きこみを防ぐことが出来ます。
熱源の下に板を敷く
雪の上に焚火台やストーブ等の熱源を置いて使用する場合、熱源の下に大き目の板を敷きましょう。雪の上に直接熱源を置くと、熱源から出る熱が周りの雪を溶かして熱源の足が雪の中にめり込んでしまうため、熱源が傾いたり、全体が雪の中に沈み込んだりします。特にストーブは傾くと不完全燃焼するため大変危険です。小板まきばの里では、貸し出し用の敷板を用意していますので、忘れずに使用してください。
雪中キャンプは、積雪が多かったり少なかったり、雪が固かったり柔らかかったりと、タイミングによって雪の状態が大きく変化します。その変化にあわせて設営の方法も変える必要がありますが、それが雪中キャンプの醍醐味でもあります。この記事を参考にして、手早くカッコよく雪の上にテントを設営して、雪中キャンプを満喫してください。